とある化学な研究者の日常

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既に実現している最新の癌治療!こんなにも進んでいることを知ってほしい!【前編】

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※ 本記事は2017年05月に更新しています。

癌は日本人の死亡原因の圧倒的第1位となってしまいました。。なんと日本人の半分が死ぬまでに一度は癌にかかり、1/3はそれが原因で死亡するという統計があります。あなたの周りにも癌が原因で亡くなった人もいるのではないでしょうか。

参考厚生労働省大臣官房統計情報部『平成27年 厚生労働統計のあらまし』 死亡章

悲観しそうになるところですが、最新の癌治療は目を見張る進歩があります。これまでのように副作用だらけの苦しい治療をした末に死んでしまう。。そんな話は過去のものになるかもしれません。

最新の癌治療はよく話題になりますが、ただのまとめではなく深く突っ込んだ内容になりますので、最新の癌治療についてよく知りたい方は是非読んでみてください!

【前編】では”これまでの癌治療”について、【後編】では”これからの癌治療”についてまとめてあります。

 癌とその治療の難しさ

癌とは正常な細胞としての機能を失った細胞の塊で、無限に増殖するというゾンビのような性質を持っています。癌細胞は自分で自分に増殖するようにという命令をかける仕組みを持っていて、これによって増殖し続けます。

あまりにも増殖力が強いために、癌の塊から癌細胞が剥がれて血液やリンパ液に乗って別の場所に移動すると、そこでもまた増殖して全身を蝕んでいきます。これが俗に言う”転移”ですが、この転移性のために癌の治療は困難を極めます

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話は少し変わりますが、癌細胞は健康な人間でも1日に5000個程度できていると考えられています。癌細胞は遺伝子の異常によりできますが、毎日の細胞分裂の際にこのような遺伝子の異常は必ず出来てくるので、結果として毎日癌細胞ができることになります。

それでも癌にならないのは、免疫細胞のチェックがあるからです。癌細胞を見つけると、その細胞を殺してしまう殺し屋の役割を担う免疫細胞がいて、これの働きで私達は癌にならずにすんでいます。

ところが、加齢や何らかの原因で、このチェックをスルーしてくる癌細胞が出てきます。これがしばらく続くと、癌細胞は増殖を始めます。これが癌の始まりです。癌はある程度大きくなると、免疫が気づいてやっつけてくれそうですが、実際にはほとんど免疫による攻撃は起こりません。

これは近年の研究でわかったことなのですが、癌は大きくなると免疫の攻撃を抑える物質を出して、免疫細胞の攻撃から逃れます。(正確にはPD-1/PD-L1経路

 

ここまで書いてきたように、癌細胞は”免疫細胞からの回避”によって生きながらえ、その”増殖力による転移性”のために治療が大変難しい病なのです。

 

これまでの癌治療ができること、できないこと

癌の三大治療法は①外科的療法(手術)放射線療法③化学療法(抗癌剤による化学療法と言われています。それぞれメリットとデメリットがあるのですが、詳しく見ていきましょう。

①外科的療法(手術による治療)

一般の人であれば、癌治療と言えばまず手術が出てくるのではないでしょうか。手術による癌部位の切除は今も昔も非常に効果のある方法です。手術の最大のメリットは物理的に除去することによって、他の方法では治療が難しい大きな塊となった癌を根本的にごっそり取り除くことができる点です。最近では内視鏡によって、傷口も少ない手術が可能に鳴っており、重要な治療法です。

そんな手術にもデメリットは存在します。それは転移癌がある場合には効果が著しく低下することです。転移癌は目に見えないくらい小さいサイズであることもあります。そのような場合は全て切除することはもちろん不可能ですので、手術による治療が有効なのは、まだ転移していない比較的早期発見の癌に限られます。

さらに、いくら技術が進んだとは言え、身体を切り裂く手術は体力を奪います。患者が高齢である場合や体力が無い患者の場合には手術自体が負担となって施術することができません。

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放射線療法

放射線による治療も有力な選択肢の1つです。放射線療法には外部から放射線を照射する外部照射療法と、体内に放射能を埋め込んで体内から放射線を当てる内部療法があります。前立腺癌などでは内部療法が有効といわれていますが、通常は外部療法を用います。

ひとえに放射線と言っても様々な種類があることに留意が必要です。下にその種類を示しますが、本当に色んな種類があります。

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 近年は特に重粒子線による治療が注目を集めています。重粒子線療法とは、非常に小さな粒子を光に近い速度で打ち込むことで治療する方法です。この方法による治療は早期発見の癌であれば、手術と同程度の治癒能力があるとされています。それでいて、手術の様な身体に対する侵襲は無いのがメリットです。また放射線を癌にだけ当てるため、全身への副作用は少ないのも魅力です。

 デメリットとしては、保険適応されている症例が限られていること、また保険適応であっても非常に高額な治療費がかかることです。また、全身に転移したような癌にも使えません。1つ1つの塊に放射線を照射するのは非常に時間とお金のかかる操作で、全身に転移した場合現実的に対応できないのです。また胃がんのような常に動いている臓器が相手の場合には標的を定められないので使用できません。

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(上:重粒子線治療室のイメージ図)

③化学療法(抗癌剤治療)

 化学療法は言わずと知れた抗癌剤による治療です。抗癌剤には様々な種類がありますが、基本的には静脈から注射や点滴によって癌細胞を殺す働きのある薬剤を注入します。

最大のメリットは、薬剤が全身に広がるため、全身に転移したような癌に対しても効果を発揮することが出来る点です。どんな小さな転移癌であっても、薬剤が届く限りは有効なのです。そのため現代癌治療のメインとなっていて、手術や放射線療法と並行して使われています。

その最大のデメリットは抗癌剤による副作用です。基本的に癌に対して毒性のある薬は健康な細胞に対しても毒性を示すので、それによる全身性の副作用が避けられません。これは患者のQOLを引き下げる大きな問題となります。

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 とは言え、現在の治療法で転移癌まで全身の癌を叩けるのは抗癌剤しかありません。ですので、できるだけ副作用が小さく、効果が大きく、短期間で治療が終わるような化学療法が待望されています。

長くなってしまったので、2つの記事に分けました。

以下の記事では最新の癌治療の現状について解説していきます。

urahara-kisuke.hatenablog.jp