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完全栄養食品と言われるミドリムシの使い方は食べ物だけではない!グリーン燃料として期待されるミドリムシ

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完全栄養食品として注目を集めているミドリムシ学名ユーグレナ)ですが、近年このミドリムシから石油に代わる燃料を作る研究が注目されているのをご存知でしょうか?

ミドリムシはCMなどでも見かけるように、59種類というとんでもない数の人間に必要な栄養素のほとんどを持っていることで一斉に注目を集めましたが、実は最近ミドリムシからは栄養以外にも油を得ることができ、これが現代の化石燃料の代わりになるのではないかということで更に注目を集めています。

世界で初めてミドリムシの屋外大量培養に成功した株式会社ユーグレナは2020年に近距離国内線の飛行機にミドリムシから精製したジェット燃料を使うという計画を立てています。

この記事ではミドリムシから作る燃料の何が良いのかについてまとめました。これからアツくなっていく分野ですので、ご一読ください。

 

ミドリムシってどんな生物?

ミドリムシは身近にいる生き物で、みなさんも見たことがある、田んぼの水を緑色にしているあいつです。大きさは髪の毛の太さよりも少し小さいくらいの微生物で、太陽の光で光合成もできる植物のような性質と、自分で動くことができる動物の性質を併せ持っています。

光合成をすることで大気中の二酸化炭素を吸収し、酸素を放出することから、密閉された宇宙ステーション内で使えないかと、NASAによって研究が進められました。その後人間の体に必要な栄養素のほとんどが含まれていることが発見されてからは、栄養食品や健康食品としても用いられるようになりました。それと同時期に、ミドリムシに軽油のような良質の油が含まれていることがわかり、これを代替燃料として使用できないか、という研究が盛んに行われるようになりました。

 

しばしば他の代替燃料と比較されるミドリムシ燃料

石油を使わない代替燃料を作る手段はいくつかあります。しかしそれらの他の方法に比べてミドリムシの燃料は圧倒的に優れています。例を挙げて比較してみましょう。

最も有名な代替燃料はトウモロコシやサトウキビ、テンサイを利用したエタノール燃料ですが、これはニュースの報道でもしばしば話題になっているように原料となっている植物が食用のものなので、燃料を作るために食料の高騰などが起きることが問題とされています。その点ミドリムシはもともと食用ではないので、そのような心配はありません。

食用の植物を利用せずに代替燃料を得る方法なら他にもあります。第二次世界大戦中に石油が不足した日本では薪から石油の代わりとなる燃料を作っていました。木や雑草には石油を構成する成分と同じ、炭素や水素から成ります。そこで木や雑草を特殊な方法で変換(C1化学)してやると石油と似たような液体燃料が人口的に得られます。

木や雑草は食用ではありませんので、エタノール燃料の様な食糧不足などの問題は起こりません。しかしこの方法で作る燃料は複雑な処理が必要になるために、装置が大掛かりになる他、燃料を作る際に大量の燃料が必要なのであまり現実的とは言えません。

ミドリムシを使った燃料作成では、ミドリムシを必要に応じた規模で培養すれば、実験室レベルからコンビナートレベルまで対応できます。

 

あまり語られないミドリムシの本当の凄さ

上に書いたような問題を回避していることもミドリムシの凄さなのですが、実はミドリムシには他の植物を利用した場合よりも圧倒的に優れた点があります。それはミドリムシ光合成の効率が圧倒的に良いということです。

以下の表を見てみてください。

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これは単位面積あたりから取れる燃料の量の比較なんですが、ミドリムシの所属する微細藻類が圧倒的に効率が良いことがわかります。ちなみにデータとかは手元にないんですが、木とかから燃料を作るとなると、トウモロコシよりはるかに効率が悪いです。

ミドリムシは他の一般的な植物に比べて生体中に占める光合成組織が多いことがポイントだと思います。いずれにせよ、この単位面積あたりの燃料産生量の高さは、将来的にミドリムシから代替燃料を作っていくということになったときに非常に重要になると思います。

 

ミドリムシ以外の藻類と比べた時の利点

ここまでミドリムシは食料危機をもたらさず、それでいて単位面積あたりの燃料生成率も高いということを書いてきました。しかしこれらの条件を満たす藻類は他にもあります。その1つに沖縄のマングローブから発見されたオーランチオキトリウムがあります。

藻類の中では群を抜いて油の生産効率が高いという優れた特徴を持っていますが、油の産生には有機物が必要というのが難点です。つまり、多くの燃料を作ろうと思うと、さつまいもやトウモロコシなどのでんぷんをあげなくてはなりません。これでは食糧危機の問題は避けられません。

他にもボトリオコッカスという藻類もあって、これは光合成で効率よく燃料を産生できますが、まだ生体が十分にわかっておらず大量培養がうまくいくかがわからないのが現状です。その点、ミドリムシは㈱ユーグレナによって大量培養法が確率されているのが強みです。

 

まとめ

このようにあらゆる条件でミドリムシからの燃料開発は期待を集めています。日本でこの開発の先頭に立っている㈱ユーグレナ代表取締役の方は分子生物学の博士を持つ方です。ミドリムシが世界を変えるという信念に立って設立された会社ですので、今後の展開が楽しみです。本当にミドリムシから作られた燃料で飛行機が空を飛ぶ日も遠くないことでしょう。